猫にしつけと言っても簡単です。トイレと爪とぎだけです。
猫は、何と言っても自由人なので、犬のようにお座りや待てとか、境界線トレーニングとかと言ったトレーニングは、無理です。
トイレ
猫を飼うにあたって、一番初めにしつけなければならないのは、なんと言ってもトイレですよね。けれど余り心配し過ぎないで下さい。猫の場合、トイレのしつけは比較的容易です。
猫は、本能的に砂のある場所でしか用を足さないと言われています。オシッコやウンチをする前に前足で砂をかき、そこがトイレなのかどうかを確認します。
また、この動作は「これからトイレをするぞ」という合図なので、もしあなたの猫ちゃんが、ソファやベッドの上またはその他のトイレではない場所でこの「砂かき動作」をしていたら、そっと抱き上げて早急にトイレに連れていってあげましょう。
万が一、トイレ以外の場所で用をたしてしまった場合には、その瞬間に叱らなければ意味がありません。現行犯でなければ、叱っても猫は理解できないのです。例えば、あなたが外出中に猫ちゃんが「そそう」してしまったとしましょう。帰宅したときに猫ちゃんを叱っても、猫ちゃんは何故あなたが不機嫌になっているのか理解できないのです。そんな時は、叱るのを諦めてください。叱り方については、下記の「叱り方」の項目を参照してください。
生まれたばかりの子猫の場合、母猫がトイレを子猫に教えるようです。生後5~6週間たって一人で走りまわれるようになると、トイレ以外の場所で「そそう」してしまうことがあります。そんな時には、トイレを入れた大き目のケージに1日か2日子猫を閉じ込めてしまいましょう。もちろん、閉じ込めるのはトイレのしつけが目的です。閉じ込めっぱなしにするのではなく、タイミングを見計らってケージの外で遊ばせてあげなければなりません。
爪切り、爪とぎ
キングと暮らし始めたのは、キングが5ヶ月の時でした。また、メイミイとギズモは生後2ヶ月目に我が家にやってきました。不思議なことに、この3匹は爪研ぎをしません。壁紙も家具もカリカリやらないんです。もしかしたら、頻繁に爪切りをしていたので、猫たち自身が爪を研ぐ必要がなかったのかもしれません。
4月末に生まれた子猫たちも、特に壁や家具で爪を研いでいるということはないようです。ただし、やんちゃ盛りなので、走り回ったり、高い場所に飛び乗ったりするときに、壁や家具に爪で傷をつけてしまっているようです。
子猫の爪は、成猫の爪より細く、伸びるのも早いです。成猫の場合は、1週間を目途に、子猫の場合は4、5日を目途に爪を切ることをお薦めします。
爪切りを頻繁にすることに加えて、爪とぎも用意してあげるのがいいでしょう。我が家では、10×30cmくらいの板に麻縄が巻かれてある爪とぎをおいています。また、段ボール製やその他様々な爪とぎが市販されていますから、あなたの猫ちゃんが一番気に入るものを見つけてあげてください。「せっかく買ってきたのに見向きもしてくれないわ」という場合には、粉末のまたたびを少しだけ振り掛けてみてください。
爪とぎのしつけ
最も、骨が折れるのが爪とぎのしつけです。猫はお気に入りの爪とぎ場所をなかなか変更してくれないので、子猫が勝手な場所で爪とぎをはじめる前に、必ず爪とぎ板を用意し、折りを見て子猫を乗せたり、軽く前足で触れさせると良いでしょう。
家具や絨毯などでの爪とぎをやめさせるには、一苦労します。猫が爪とぎをしている時に、「ダメ!」を連呼し、爪とぎ板に連れて行き、何度も何度もこれを繰り返します。なかなか覚えないようならマタタビを利用するのも良いでしょう。決して、爪とぎ場所をなかなか変更してくれないからといって、飼い主が根負けしてはいけません。また、必ず、現行犯の時だけ、叱って、根気よく爪とぎのしつけをしましょう。
叱り方
あなたがどんなに猫ちゃんを可愛がっているとしても、やっていいことと悪いことをきちんと教えなければなりません。例えば、トイレ以外の場所で用を足したり、キッチンの調理台やタイニング・テーブルの上に飛び乗ったり…いけないことはいけないと子猫のうちからきちんとしつけてあげてください。これは、マナー面だけの話ではありません。例えば、何かの拍子に猫ちゃんが調理台に飛び乗って、そしてたまたまガス台に火がついていたとしたら…想像するだけでも怖いですよね。
効果的な叱り方を紹介する前に、絶対に止めるべきことを説明します。
それは、「体罰」です。
猫をしつけるには、猫がした行動自体を猫が不快だと思う結果にむすびつけなければなりません。例えば、殴るなど、猫に痛みを与えても、猫はそれが自分の行動とは結び付けることができないばかりか、自己防衛のためにあなたを攻撃してくるかもしれないのです。それでは、効果的に叱るにはどうすればいいのでしょう?
大きな声を出す・手をたたく
猫が何かをしようとしているとき、「○○ちゃん、ダメよ!」と大きな声をだしたり、猫の顔の近くで両手をパチンとたたいて大きな音を出してみましょう。猫ちゃんの意識は、一瞬、あなたの声や手の音の方に向きます。猫ちゃんが再び同じ行動をとろうとしたときには、また同じ事を繰り返してください。
そして、「怒った顔つき」で大きな音を出すようにしてください。私の経験では、賢い猫は、人間の表情を理解するように思います。トイレ以外の場所でのオシッコやウンチを「現行犯で」見つけた時には、首の付け根をしっかりと握って、そそうした場所のニオイを嗅がせ、「怒った顔つき」で「ダメよ!」と叱りましょう。
水スプレー
我が家の猫たちにとって一番有効な方法です。いけないことをしようとしているときに、霧吹きで猫の鼻をめがけてスプレーするのです。最初の1、2回くらいは本当に水を吹きかけます。3度目くらいからは、霧吹きを向けて「怒った顔つき」で「ダメ!」というだけで、猫はその行為を止めます。
いずれの方法をとるにしても、猫ちゃんをしつけるためには、同じことを何度か繰り返さなければなりません。忍耐強くしつけてください。くれぐれも、短気を起こして体罰を与えないように。
猫のしつけについて思うこと
猫ちゃんに「やっちゃいけないこと」を教える。
犬と違って、猫をしつけるなんてできないんじゃないかしら?
確かに、私もこのようなことが書かれている本を読んだことがありますし、私自身も「もー、何度言ってもきかないんだからぁ」とあきらめかけた経験もあります。
けれど、成猫の知能は人間の3歳児に匹敵するとも言われているんです。人間との違いは思考形態。人間が経験に基づいて「理屈」でしつけられていくのに対し、猫の場合は、自分の行動とその結果についての因果関係を理解して、その場、その場で判断していくらしいのです。実は、これが猫のしつけのヒントなのです。
例えば、毎日同じ場所で食餌を与えていると、あなたが餌のお皿を持っているのを見ただけで、猫ちゃんは毎日餌をもらっている場所に先回りしてちょこんと座って待っています。このような経験をした方々は、沢山いらっしゃるのではないでしょうか?
これは、あなたの猫ちゃんが比類希なるIQを持ち合わせているというわけではなく、餌がもらえるヒント(この場合は「お皿」)を見つけ、餌を食べる場所に行くという「刺激」と「結果」の因果関係を習得しているわけです。
もう一つの例は、キャットショウに出陳される猫ちゃんたち。ショウには、信じられないくらいマナーの良い猫ちゃんたちが出陳されます。これは、決して純血種だからマナーが良いのではなく、猫の習性を熟知したブリーダーさんたちが、その猫の良いところを引き出しかつ、悪いところを抑える訓練をしている成果なのです。その猫がもって生まれた性格等を理解し、マナーの良い猫にしつけていくのです。身体を触られたときに甘えたり、ケージの中でおすましできるように育てていくのです。例え、多頭飼いで周囲に他の猫がいる環境の中で生活している猫でも、その集団の中で「いじめられっ子」の猫は、見知らぬ猫が集まる場所に連れて行かれるとドキドキして落ち着きがなくなってしまいます。周囲に猫がいるけれど「いじめられない」環境を作ってあげることによって、初対面の猫たちに囲まれても堂々とした態度を保てる猫になります。
人間に噛み付いたり、食卓の上に登ったり等々、日常生活の中にある「やっちゃいけないこと」を猫の習性に基づいて習得させるにはどうすれば良いのでしょうか?
これも、前述の「刺激・自分の行動」とそれに伴う「結果」の因果関係を確立することが役立ちます。つまり、「やっちゃいけないこと」をした直後に必ず「猫にとって不快な結果」を与えるというのを繰り返していくのです。
また、一貫性を持って不快な結果を与えるよう注意してください。昨日は叱って今日は叱らないということでは、何も習得してもらえませんから。
猫にも個体差がありますから、大きな声で「ダメ!」というだけで「不快な結果」と認識する猫もいれば、それ以上の不快さを与えないと効果がない猫もいます。水スプレーを使ったり(これは我が家で効果がありました)、猫の鼻をチョンチョンと軽く指で叩くというのも良いかもしれません。別項目でも書きましたが、「体罰」だけは決して与えないでください。猫は物事を理屈で理解しないので、体罰による「恐怖」で逆上してしまう可能性があるからです。
「やっちゃいけないこと」を習得させるには、なるべく子猫のうちからしつけをはじめることをお勧めします。成猫になってからしつけようとしても、子猫のときからの習慣が身に付いてしまっているために新しい習慣になれにくくなるのです。「どーして、こないだまでやっても良かったことなのに今日は叱られなくちゃならないの?」猫はそう思ってしまうかもしれません。人間だって身に染みついてしまった癖は取り除きにくいでしょ?
猫ちゃんにマナーをしつけるのは、一緒に暮らしている人間たちが快適に過ごすというためだけではなく、猫ちゃんの安全を確保し、あなたのかわいい猫ちゃんをよりかわいく育てるために大切なことです。あなたの家にやってきたその日から、猫ちゃんにマナーを習得させてあげてください。最後に、「諦め」は禁物です。「あれ?昨日まで叱ってたのに、今日は叱られない。だったら、こーんなことしても大丈夫なわけね?」って思われちゃいますからね。